『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

やりたいことをするために、50%だけ嫌でも仕事をする。

先日、知人にお招きいただいたパーティーで、あるアーティストの方(以下、Tさん)の話を聞く機会があった。
当日は人数がある程度いたこともあり、2グループに分かれてトーク→質問という形で進行していたが、私は後の方だったこともあり個人的な質問をすることができた。初対面ゆえ話の真意をすべて掴めていないかも知れないが、私は表題の「50%だけ嫌でも仕事をする」という言葉に救われたことから、謝意も込めて記事に綴っておきたいと思う。
※話の真意をご本人に確認するのも申し訳なく、迷惑をかけぬよう実名を控えました。
 

 

 

◆「やりたいこと=仕事」とはいかない

私がぶつけた質問は、「関わる仕事が増えていく中で、すべての作品に心を込めるにはどうするか」ということ。
 
これは私自身の悩みでもある。ありがたいことに受注が途切れることはないが、かと言って選り好みできるほどの安定感もないため、「自分が少し無理をする程度」にスケジュールを埋めているのが現況だ。だが、現実問題として休日も夜も仕事に明け暮れている訳で、質問の通り「すべての作品に心を込める」のは至難の技である。まして必要以上に細かな指示を出す相手との仕事を、心折れずにやり遂げることは難しい。このパーティーがあった頃は、ちょうど心が折れていたこともあり、場を弁えず私はこんなことを質問してしまったのだ。
 
「もう、目前の仕事で精一杯で、職人のように黙々と仕事をするような状態なんです」と私が笑いながら言うと、Tさんは「それじゃダメだ」「これがやりたいと思った頃を思い出すべきだ」とキッパリ。その上で「やりたいこと=仕事」とはいかない現実を、ご自身のことを通してお話いただいた。自分もやりたいことがあるが、それは自分の持ち出し(=お金)でやっていると。この時点で、私の目のウロコは落ちていた。
 
会社勤めの方には笑われるかも知れないが、私は物を書くのが好きだから、物書きを職業としてやっている。だから、「やりたいこと=仕事」というのは当然で、やりたくない案件があるということは、自分の営業力がないか、運がないかであり、やがては「やりたい仕事だけがやって来る日がくるだろう」くらいに考えていた。でも、目の前にいる高名なTさんでさえ、やりたいことだけなっている訳ではないということに、私は思わず恥ずかしくなった。仕事にやりたいことを求めるのではなく、立て分ける。その通りだと私は心から思った。そして、表題の話に展開していった。
 
 

◆やりたいことの価値や魅力を最大化するために

生活の糧を得るという点でも、仕事は大切。でも、時間は限られている。だから、サッサと仕事を終わらせて、心底やりたいと思うことに没頭する。
「やりたいこと」と「仕事」にはほどよいバランスがある。これは個人差があって、僕(Tさん)は50%くらい
というのが、次に出てきたTさんのアドバイスだった。
 
ここで私が立ち止まったのは「自分がやりたいことって、何だっけ」ということ。あまりにも仕事に忙殺され、まったくこの点を忘却していた。実はこの場で答えは出せずしまいで、帰り道に1時間ほど電車に揺られる中、ようやく見えてきたくらいだった。
やりたいことについてTさんは「寝る時間も惜しいと思うくらい」と表現するのに対し、私はそれに至っていないのかも知れないが「誰かの人生や生き様を綴る」というものだ。それを実現するために出版企画書の制作を手伝ったり、新聞社の依頼で小さな記事を書いたりしている。これらも仕事のうちだが、いくら報酬が安くとも、忙しくとも、断るつもりはない。
 
そして話を戻して、仕事である。往々にして嫌な仕事ほど捗らないものであるが、確かにサッサと片づけるべきだ。その方が価値的だし、やりたいことをするまでの葛藤が以降の魅力を増幅させる。これも先と同様に納得した。総じて、あらゆることにムダはないということも再認識できた。
 
 

◆習慣化したい「スピード感を意識して仕事をする」姿勢

この出会いの後、私は「スピード感」を意識して仕事をするように心掛けている。基本的に嫌な仕事をする時、気分が乗らない時にはグズグズしてしまうのだが、なんとかスピード感をもって仕事をする姿勢を習慣化するレベルまで身につけたいと願っている。
ありがたいことに現在は、抱える5案件のうち2つが「できればやりたくない仕事」、2つが「やりたいことに近い仕事」である。そう、今こそスピード感を意識するスタイルを身につけ、やりたいことを思いっきりやるスタイルへと移行できるチャンスなのだ。そう捉えて、逃げることなく真正面から立ち向かっていきたい。