『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

タネを蒔く「目的」と「種類」が決まった一年。―2015年を総括して

2016年の年頭に私は、フリーランスになって満6年を迎える。
 
一般的には節目とされる満5年には間に合わなかったが、自分のライフワークであり、ライスワークにもなる事業の方向性を年内に固めることができた。その方向性は自身の努力で見えてきたというよりは、諸先輩方の助言をもとに試行し、“見るべきものが見えるよう、顔の向きを変えてもらった”という方が正しい。その恩に報いるためにも、明2016年は蒔くべきタネを蒔き、しっかりと育てていきたいと強く決意する次第である。
 

◆「他人の言葉を鵜呑みにする」ことが新展開に

 

 

私は一つの信条として「何が起こっても、目の前の事象すべてに意味がある」というものがある。たとえ失敗しても、自らの油断や怠惰によるものでなければ、必ず糧となる。人間ゆえ、脱線したり、迷ったり、遅々として進まなかったりということもある。が、日々自身を見つめ直すことで補正をし、少しずつでも前へと歩みを進めようと取り組んできた。この歩みのスピードが大きく加速したのが2015年の特筆するべき点といえる。
 
前年からは出版社からの案件受注だけに依存する将来像に不安を感じ、新たな事業の柱を探していた。試行錯誤をするなか、年頭には出版企画書を作成するサービスの提供を掲げるようになり、実際にいくつかの案件を着手。そのなかで、商業出版となった企画を生み出せたことは本当に幸運だったと思う。
 
次に、このサービスを多くの方に周知し、かつ新規顧客とのマッチングを図ろうとセミナーを実施することに。このきっかけは、いつも利用するコワーキングスペースのオーナーとの会話だった。前後は覚えていないが、「セミナーをやってみたらどうか」との言葉には、自分も思うところがあった。これまでは集客への不安からセミナーの自主開催を避けてきたが、ここでオーナーの言葉を鵜呑みにして「やってみよう」と思い立ち、夏から2回ほど実施した。
 
さらに、ここでもう一人、私が鵜呑みにする言葉を口にした人物とのやり取りがあった。私と幼なじみで、いまでもご近所の付き合いがある友人である。彼は税理士事務所の社長で、企業経営に関する情報をよくおさえている。私も普段から頻繁に話をしていたが、このときはちょうど「小規模事業者持続化補助金」の話題になり、応募してみることにした。「1、2度は落ちるものだから、来年(平成28年度)の第1次採択に向けた練習として、今週の追加分に応募したらどうか」という言葉を、先に続いて鵜呑みにした私。結果、私の提案した事業は採択となり事業を実施することになった。
 
しかし、先の事業採択は喜ばしいことだったが、如何せん採択期間が2カ月しかなく時間がなかった。どうしようかと悩んだ挙句、以前から種々指導を受けてきた大手電子書籍レーベル・金風舎の香月社長へ思い切って相談することに。ここで新しい展開が大きく広がったのである。
 

◆出版はゴールではなく、スタート

 
事業の採択内容として、私は「ワカモノひとり起業家への出版支援」というものを考えていた。期間中には、私も携わらせていただいた著者様の出版記念パーティーで講演の機会を賜り、自分の考えを多くの方に聞いていただくことができた。そして、自身でも「著者発掘コンテスト」を開催。当日は7名にエントリーいただき、2名が審査通過となった。来春にはコンテスト発の著者が誕生する予定である。
 
コンテスト開催にあたっては、香月社長から様々な事を教えていただいた。なかでもハッとさせられたのが、「出版はゴールではない」ということ。頭ではわかっているつもりだったが、当初自身が考えていたのは出版をゴールにするサービスであり、このままで事業を興しても成長は期待できないものだった。正直言うと、教えていただいた時点でもまだボンヤリしていたのだが、出版を希望される方々と話すなかでスッキリと目が覚めた。もう少し考えるところはあるが、ここは走りながら詰めていきたいと思う。
 

◆価値ある本をつくり、著者を幸せにできる編集者に

 
2009年の歳末に、私は人生のゴールを考えていた。
至った結論は、「市井に生きる名もなき一人の生き様を本として歴史に刻み、未来へと残しゆく仕事がしたい」という想い。収入や周囲への影響を度外視したものだが、自身が老いてからであっても成し遂げようという考えだったと記憶している。そこが出発点となっている。
 
そんな想いでも、実現させようと動いた分だけ良い方へ変化していった。そもそも私は「社会貢献、人に尽くすこと=何らかの自己犠牲で成り立つ」と信じていた部分があったのだが、そうでもないことがようやく今年になってわかった。世の中は、そんな単純なものではないようだ。
 
明2016年からは、「価値ある本をつくり、著者を幸せにできる編集者」をめざす。誰もがそうであるかも知れないが、私自身には「世界でただひとり、自分だけ」といえる体験や学び、人との絆、物事への考え方がある。それらすべてをフル活用し、著者がもつコンテンツの原石を磨き、価値ある本をつくっていきたい。さらに、その本をもとにして、著者自身がハッピーになれるような編集者になっていく所存である。現状は、タネを蒔く目的と種類がわかった程度だろう。しかし、ここが決まればあとは体を動かすのみ。全力疾走して、見える地平の景色が楽しみだ。
 
 
 
第2回 電子で出版!著者発掘コンテスト【共催:金風舎】