『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

『読者が涙を流す』原稿を書くための2つの自己ルール

私が誇りに思う仕事の1つとして、
読者が『涙を流す』原稿を、
これまで数本だけですが、書かせていただきました。

ここでいう涙とは、感動の涙。
どんな仕事でも同じですが、
自分が働いたことで「人の役に立つ」ことほど
仕事冥利に尽きることはありませんよね。

さて、私はこうした原稿を書くときに
2つの自己ルールを課しています。
あまり方法論にしたくないのですが、
自分にとっても明記しておきたいルールなので、
ここで書いておこうと思いました。

さて、そのルールとは

  1. 自分が「涙を流しながら」原稿を書く
  2. 冷静になって校正し、それでも「涙が出る」レベルまで書き直す。

というものです。

          *

1,自分が「涙を流しながら」原稿を書く
人の心を打つ原稿、感動させる原稿なら、
文章のテクニックでどうにかなるものでしょう。
世の中には、読者を感動させる作品は無数にありますから。

でも、涙を流す原稿となると、
自分が当事者か、
もしくは当事者に寄り添っていなければ書けません。
だからこれまでも数本しか書いていませんし、
基本的には「自分が当事者に憑依する」くらいの
思い入れを持てなければお引き受けしません。

さて、ここまで考えて原稿を書くんですから、
書くまでには当事者と同じ心になるよう、
同じ体験をしたり、たくさんの人に取材を重ねていきます。
長い時には1年近く、自分が当事者として携わるわけです。

そうして書く段になると、
自分自身も「涙が止まらない」状態へと、自然になっています。
これまで書いた原稿は、いずれも号泣しながら書きました。
逆に言うと、そこまで自分を持っていけないのなら、
私はまだまだ書けるレベルでないと判断しています。


2,冷静になって校正し、それでも「涙が出る」レベルまで書き直す。

私も人間ですから、号泣すると文章が荒れます。
感極まっている状態で、適切な表現など考えられる訳がありませんから。
だから書き終えた後、しばらく心を落ち着かせるんですね。

1時間ほどして、まずは出力した紙をにらめっこします。
当事者がある程度複数の人数であれば、
事情のわからない人、ムリにその集団に加わっている人もいる。
その人たちにとって適切な表現かどうかを考えます。
そういう角度の校正作業です。

そして、その校正作業中でも
自分が思わずジーンとくるなら、修正して納品
来ないなら、もう一度書き直します。これも自己ルール。
自分が一番泣けないと、ほかの人なんて泣けない。
とても短絡的な考えでしょうが、
私はそれを何より大事にしているんです。

          *

こうした原稿と向き合うとき、いつも思うことは、
自分のテクニックの甘さ。本当に、まだまだだと実感します。
もっとたくさんの文章に触れて表現を学び、
多くの体験をして、世の中の事象の深みを知れるならば、
1人でも2人でも、役に立てる人が増えるはず。
それを痛感して、そして忘れないようにメモをして、
次なる仕事までに成長しようと、努力していくんです。

それもまた、ライター業の冥利です。

―残り7年と311日―