出版不況だから「出版しない」は、筋違い。
いよいよ著者発掘コンテストが迫ってきたこともあり、今はいろいろな方へお誘いのメッセージを送っています。
このイベントは、出版したい人にとってはメリットしかないので感触は良好ですが、そうでない方は企画を書面に落とし込むだけでも尻込みされてしまいます。(ちなみに私どもでは、アンケート形式で企画書が作成できるシートをご用意しています)
さて、そんな方々を色々なお話をしていると「出版不況だから、本をつくっても意味がない。出版しない」という声も聞きます。こちらとしては本音でお話をいただけることに感謝していますが、その上で「それは筋違いです」と明言しています。何のために本をつくるのか。そこを最初に確認しておくことが大切です。
◆「本が書店に並んだ」「出版できた」がゴールでいいのか?
つくるモノや原材料、耐久性などで違いはあるでしょうが、多くのメーカーは“需要がなければ、生産をおさえよう”と考えるものです。これを単純に「本」を当てはめたなら、表題にある「出版不況だから出版しない」は正解です。
ただ、これは「本をつくる」ことを最終目的とした場合です。多くの人が知っている通り、現代で「本を書いて印税で儲ける」ということは、ごく一部の文芸作家さんや芸能人でなければ成し得ないもの。とくにビジネスに直結させる内容の本を出版した著者ならば、本が書店に並ぶのも、読者の皆様に読んでいただくことも、最終目的の途中にあると思うのです。もちろん、本が売れるに越したことはありませんが、そこばかりに捕われて商機を逃すのはもったいない。著者としてはやっとの思いで原稿を書き上げたところですが、出版をもってようやくスタートラインに着いたようなもので、そこからが正念場なんですね。
◆出版による効能は「新規開拓・拡大」だけではない
では、なぜ出版するのか。効能について綴っておきましょう。
一つは従来と同じく新規開拓・拡大というものがあります。書店やAmazonが一つのタッチポイントになり、著者自身が手の届かなかった方(読者)が顧客になったり、ファンになったりしてくれる可能性が期待できます。「自分に代わって営業をしてくれるツール」といっても過言ではありません。
しかし、出版の効能はそれだけにとどまりません。
大きなものとしては「ブランディング」と「WHYの再確認」があります。
出版は、企画書をつくる工程からスタートします。企画書をつくるには、「本に書きたい内容をどう見せていくか」という考えが不可欠であり、それに沿って章立てを考えます。この考える作業こそブランディングに通ずる部分であり、磨き上げたストーリーこそ良質な作品になっていきます。
そして、読者の心を打つ、感動させる部分は「WHY」に秘められています。著者がどんな想いで本を書いたか、いかなる志をもっているか、など「なぜ」の部分を明記し、理解してもらいやすいエピソードや具体例、ニュースとリンクさせていくことで、著者と読者の心の距離がグッと縮まるんですね。
上記に挙げた2点はそれぞれ、コンサルタントやプランナー、士業で専門的に取り組まれる方も多いです。
しかし、本は電子であれ紙であれ、一つの形、実体として残ります。ここがポイントなのです。
「今の時点で書きとどめたいことがあるから、出版する」という著者さんがいるのもそうした理由からで、現在を形に残すことで、未来に比較や検証をすることが可能になるのです。
◆先を見越して着手するなら電子出版が有利
私は電子も紙も扱う書籍編集者ですが、電子の可能性に期待しているからこそ、電子書籍レーベルと共催して「著者発掘コンテスト」を開催しています。
膨大な紙の本の出版点数を見ていて思うのは、「もはや“新しい”といえるようなジャンル・内容はない」ということ。これは電子も同様と言えるのですが、まだジャンルによってはまだ有用な本が見当たらないということがあります。先を見越しての出版なら、電子が有利だと私は考えています。
末筆ながら…
胸に秘めた企画がある方、磨けばコンテンツになるような体験やテクニックをお持ちの方は、ぜひコンテストへご参加くださいませ。3月5日、大阪で開催です!