『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

相談で多い「自叙伝」出版が避けられる理由とは

書籍の仕事が増えるにつれ、私のもとには「出版してみたい」という方からの相談や質問をいただく機会が増えてきました。
そうした相談で多いのが、自叙伝に関するもの。
 
「自分はこんな経歴を持っているが、本にして出したら売れないか」
「尊敬する○○さんは幾度もの苦難を乗り越えてきた人生だから、本にしてあげたい」

 など、話を聞くこちら側も慎重にならざるを得ないものばかりです。

 
ご相談されるお気持ちは十二分に察していますが、私としては「結論からいうと自叙伝での出版は難しい」と正直に返答しています。その理由、またアドバイスを今回は綴ります。

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◆「成功者の足跡」をなぞっても、現代社会では勝てない

かつては当たり前のように出版されていた自叙伝が、現代において避けられる理由。それは、現代社会が多様性に富み、複雑になっているからです。
 
私はまだ生まれていない時代ですが、おそらく日本経済が年々発展を遂げた時代には、「努力した分だけ成果が得られる」ということが比較的容易であり、その道で成功した方の足跡をなぞりながら苦労を重ねれば、同じように成功できる時代だったと推測します。
 
しかしながら、現代ではそううまくいきません。成熟した社会において成功するには、置かれている環境や人脈、運などの不確定要素を生かして、逆風と立ち向かい、上手に前へ進んでいくしかないのです。また、多くの人が体感しているように、社会変化のスピードは加速しています。つまり、「現時点より少し前の成功談は、現時点から少し先の未来でも成功する保証がない」という状況となっています。
 
こうした時代に、「自分はこれだけがんばった、成功した」と自叙伝を本にしても、読むのは関係者とファンだけです。芸能人やスポーツ選手、文化人といった著名人は別として、多くの一著者に興味を持つ読者はごく少数といえます。だから出版社側も、相当数の購入者が見込まれたり、完全に自己負担であったりしない限り、自叙伝での出版は避けようとします。
 

◆直球ではなく、変化球なら大歓迎という不思議

Amazonや書店でも、「○○社長物語」「経営者△△の生涯」なんてド直球な自叙伝は見かけなくなりました。対して多いのは、「日本一のビジネスマンが語る□□つのコツ」みたいな本です。でも、その本のページを開けば、思いっきり自叙伝が書かれた章があると思うんです。
そう、直球ではなく、変化球を使うとコンテンツが生きてくるんですね。
 
変化球なテーマに編集する手法は、いくつかあります。思いつくところでいうと、
  1. 身につけたスキルやテクニックと、これまでのキャリアを書いた専門書や実用書
  2. 多くの人が経験できないこと、ユニークなアクションとその背景にある思考を綴った啓発本
  3. 自分のある特定の時期に起こった出来事や体験をもとに、社会的な動向や新たな学問体系としてまとめた本
などでしょうか。
 
有益な情報が書かれた本は、どんな時代でも売れます。
しかし、その中身の良さが伝わらなければ売れずに埋没するんです。そこを何とかして、多くの人に貢献するのが編集の仕事だと私は思っています。
 
ちなみに、今回の「著者発掘コンテスト」では、ド直球な自叙伝でもOKです。
しっかり編集としてアドバイスさせていただき、ご納得いただければ出版できますので。ぜひご応募くださいませ。