もし大塚家具が社史を作るなら・・・
大塚家具については、27日の株主総会で一つの結論が出たので、おそらくマスコミ報道は一段落すると思われる。
私は株主でも何でもないが、「今後も関係者は大変だろうなー」とネット記事を見ていた。そこでふと思ったのが、「この会社で社史(企業史)を作るんだったら、どうするだろう?」という疑問。制作途中のものを含めれば数十社の社史を書いてきた身として、(社史を作るかどうかは不明だが、作ると仮定して)担当者の苦悩をちょぴり想像してしまった。
◆「創業者を賞賛できない」企業はけっこう多い
規模に関わらず、昨今では社史を発刊する企業が増えている。この背景については言及を避けるが、大企業は潤沢に予算を確保し、大学教授等に執筆を依頼する。よって私のもとへ舞い込むのは、大企業の子会社か中小企業ということになる。
こと中小企業は創業者一族による経営が多く、大塚家具のように(家族のつながりという点で見て)残念な形になってしまうケースも少なくない。
ただ、たとえ経営者であっても、他企業の社内事情を深く知る機会は少ないため、少しでも事業承継がうまくいかないとなると「うち(の会社)は問題なんだ」と感じてしまうのだろう。社史制作の折に担当者と話すと、たまにこんな話が飛び出す。しかしながら、実状としてはけっこう多いと私は感じている。
◆現在ではなく「当時の状況から史実を捉え、分析する」ことが大事
社史のストーリー展開や時代ごとの記述配分について、最終決定は発注者であり発刊者でもある企業に一任される。しかし、あくまでアドバイスとして私が話すのは「どこまでも客観的に史実を見る」ことだ。
例えば創業者の経営判断によって企業が損失を受けたという史実があるとする。これは現経営陣にとっては非常に迷惑な話であり、場合によっては批判の対象とするだろう。この史実を社史にて記述することは、過去への反省であったり、教訓であったりという観点で大切なのだが、扱い方については一考の余地がある。
それは、「当時の状況から史実を捉える」ことだ。時代が移った現代から過去を見れば、いくらでも批判や失敗といえる材料は出てくるだろう。しかしながら、景気や経営状態、ビジネス上の常識や商慣習、もてはやされた経営論など、当時における状況を理解し頭に入れておくべきだ。そして、その状況をもって「判断、史実への経緯はどうだったのか」ということを検証することが大事だと私は考える。
◆批判も賞賛も「客観的に綴る」こと
ライターは決められた文字数に対して、過不足なく文章を綴ることが求められる。この仕事を長くやっていると、収集した情報量に関わらず文章を増減できる能力が身につく。だが、社史はこの能力がクセモノで、度が過ぎると文章に違和感が生じるのだ。ここをいかに是正できるかが、社史ライターの腕であろう。
私が社史執筆でいつも心がけていることは、できる限り「客観的に記述する」ことである。
表題からいえば、大塚家具が今後どのように歩もうとも、その時代ごとに全力で会社や顧客と向き合っているであろう経営陣の取り組みを客観的に綴ることになる。波瀾万丈のストーリーから感情的な表現を省けば、およそ面白くなさそうな感はある。しかし、それよりも正確に史実を記し、その上で後世の読み手に判断を委ねるべきだ。それが社史というものだと私は理解している。
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