『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

感動を呼び起こす『苦労話』の書き方

最近もいくつかの書籍原稿に携わっていますが、実用書を除いては『苦労話』は必須です。
成功だけを書き連ねても、ただの自慢。「何度も失敗をくり返して、ようやく成功した!」という流れがあって、やっと読者も感動できるものです。
ただ、同じ苦労であっても、書き方一つで感動する度合いに差が生じます。
やはり、感動を呼び起こす書き方というものがあるんですね。

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◆苦労話だけは、著者の言う通りに書かないというのが鉄則

私は脳科学について詳しく知りませんが、体感として「人間は苦労を忘れる生き物」だと思っています。
それは経年的なもの、記憶障害といった病気的な要因、あまりに辛く苦しいがゆえの『自己防衛の為の忘却』などがありますが、
こうした取材時に思うのは『価値観の変化』です。
 
多くの著者は苦労話をツラツラ書くことを嫌がりますが、その背景には価値観の変化があります。
「大した苦労じゃないよ」「今の価値観と違うから、それほど意味がある苦労じゃない」と言われると、私はいつも「それは違います」と説明します。
 
成功する直前まで、コツコツと重ねる苦労。恥ずかしいほどの失敗。しょうもないと思える以前の価値観。
これらこそ、感動を呼び起こす要素となります。たとえ執筆代行(ゴースト)であっても、著者の言い分だけで書いてはいけません。
 
 

◆共感ポイントを、いかに文章中に織り込んでいくか。

 
基本的に本を出版する著者、インタビューを受ける取材相手というのは、
成功者だったり、何かしらの分野で人より秀でているから取り上げられます。
読者からすれば、自分より恵まれた人との認識がありますから、「かわいそう」「大変そう」という同情的なものは、感動を誘因するには力不足です。
 
感動に必要なのは「私もそうだった」「私もこうなっていたかも知れない」というように、読者自身が共感できるポイント。
これをどれだけ文章中に織り込んでいけるかが、感動を呼び起こす度合いを決定づけます。

具体的には、下記の事柄を盛り込んでいくと共感しやすいと考えています。
 ・苦労している最中の生活感がわかる描写
 ・ごく一般的な人が思うようなこと。つらい、苦しいといった本音
 ・泣いてしまった、失敗した、落ち込んだなど、誰もが経験する挫折や失敗談
 ・お金、人間関係、裏切り、憎悪、嫉妬など、誰がイメージしても大変そうな事柄
 
ただ、苦労自体に嘘があってはいけません。また大袈裟に書いたり、脚色したりすることもよくないと思います。
書き手としてできることは、「何を書くか」であり「何を書かないか」。下記のように、書き方に慎重を期す内容もあります。
 ・恋愛、結婚
 ・子育て
 ・(会社員の場合)降格や解雇に至らない処分
 ・車や不動産などの資産、酒や女性問題など男性的な話題
といったことは、読み手によって捉え方もさまざまありますから、要注意です。

他人の苦労に感動する。苦労に共感し、そこから学ぶ。これは本当に素晴らしい文化だと思います。
もっと多くの人に感動を呼び起こせる文章が書けるよう、私も鍛錬の日々がつづきます。
 
―残り6年と264日―