『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

ライターと伝統工芸の共通性

つい先日、佐々木俊尚氏のツイートを見て
ビートたけし著「間抜けの構造」を手にしました。

間抜けの構造 (新潮新書)

間抜けの構造 (新潮新書)



もうすぐ読了するのですが、ちょうど著書の中盤あたりで
引用したい一節があったので、記しておきます。

―職人とアーティストは違うんだって。例えば漆塗りのすばらしい工芸品をつくる人間がいたとする。その人が人間国宝だとしても、それは職人芸であってアーティストの仕事ではない。
 アートというのは、職人芸からの解放なんだ。それができるのが芸術家。ところが職人というのは、自らの職人芸でアートを封じ込めるという。その戦いというか、しのぎ合いみたいなところがあるんだよ。

この前のくだりに触れると、
著者が東京藝術大学の宮田学長と話をしていたことが書かれています。
要約すると、デッサンが上手でも不合格になる人がいるそうで、
その理由については、いくらデッサンが上手くとも
「職人の上手さ」ゆえに合格にならないそうです。

これを読んで、ふと考えました。
まず「物書き、文筆業」というフィールドには、
作家、ライター、ブロガー、テクニカルライター、訳者、脚本家…
などの職業が入ってくると、私は思っています。
みんな文章を書く仕事であり、それなりに技術を要するからです。
このうち、『アーティスト』にあたるのは、
ゼロの状態から創作して書く仕事であり、
例えば文芸書を書かれる作家さんが、
『アーティスト』にあたるのでしょう。

さて、そうなると
ライターは職人芸になりますね。
確かに、仕事のスタイルや文章の技巧、
読者やクライアントの心に響く表現や言い回し等、
文章を書いて、直される度に、
自己反省をして、いい文章と巡り会う度に、
ライターの腕はあがっていくものです。
経験年数とイコールとは言えませんが、
やはり年数と比例する部分はあり、
これまで私も、熟練された先輩の文章に唸ったことは、数知れません。

◆共通性は「取り巻く環境」
職人の巧みな技術力と希少性、また古来からの伝統を守るという点から、
各地に残る伝統工芸は、多くの人から尊ばれ、大事にされるようになりました。
しかし一時代前は、
職人が作り上げる物への需要、そして仕事が減少
将来性が危ぶまれました。
さらには職人気質な世界で後継者を育成しようにも、
時代によって変化した世代を育てる難しさもあって、
なかなか後継者を育てられずに、廃業を余儀なくされた
ということも多かったと思います。

これって、考えてみれば
ライターの世界とも共通性がありますよね。
まあ、後継者を育てるという作業は
ライターにはあまりない考え方ですが、
将来性や仕事の減少は、今後ますます進んでいきます。
きっと私がこのブログを書き上げる『40歳ごろ』には
相当、こうした厳しい状況が加速してるでしょうね。

それをどう打開するか。生き残っていくか。
そのヒントは伝統工芸の世界にあるのかも知れない。
そう、自分で勝手に思っています。

―残り7年と268日―