『40歳の壁』を書け上がる!~30代フリー書籍編集者小田の戦術ノート~

ライターの多くがぶつかる『40歳の壁』。ライターから書籍編集者へとシフトしながら壁を駆け(書け)上がる30代の生き様を綴ります。

専門ライターは『原稿を書かない』勇気をもて!

あまり「思い出したくない記憶」を
今朝方、夢で見てしまったので
自戒を込めて書いておこうと思います。

あれは業界紙記者を辞めて間もない頃
私が元々回っていた業界にサービスを提供する業者の社長さんから
早朝に電話をいただきました。
「非鉄って、今後の値動きどう見てる?」との質問でした。

ここで解説しておくと、
非鉄とは非鉄金属のこと。
種類にもよりますが、鉄よりも比較的値動きが激しいんです。
そういった非鉄金属のうち、もう使わないもの(=ゴミ)は
分別すれば再生原料として売れるので、
それらを買い取る業者が存在します。

そうした業者は大体皆が付けている値段(=相場)で買い取り、
メーカーが「原料が欲しい、高くても買う!」って時に売ると
その差益で儲かるという仕組みです。

さて、話を戻しますが、
電話をいただいた社長さんは、私の経験を見込んで
最近の相場観を聞いて、お客さん(たぶん非鉄を買い取る業者)に
「こんな情報ありますよ」って伝えたかったんでしょう。
もちろん私も業界を歩いてきたプライドがあって、
それなりには答えましたが、裏付けるデータをおさえていなかったので
回答に自信はありませんでした。
そして以後、この社長から電話をもらうことはありませんでした。。。


◆あなたの腕は「現時点での本物」か。
私はたまに、業界紙記者の経験をもつライターさんに出会うのですが、
一緒にお仕事をするかどうかは、一番直近の原稿で判断しています。
業界を歩いた経験やその業界の常識を抑えているかどうかはもちろんですが
私が重視するのは「情報の鮮度」です。

先に綴った通り、私は経験こそあれど
新鮮な情報をもとに語ることはできませんでした。
業界紙記者からライターになった人の多くは、
ご自身の経験を過信するあまり、
こうした「最新の情報」を見落としたまま、原稿を書くことがあります。
記者時代なら、会社の同僚や業界関係者から常に情報を得られますし、
記事の締め切りがあるということで、
どんなに遅くとも、その締め切りまでには情報収集をするものです。
そういった「いい意味での強制」がライターにはないので
自分でも気づかないうちに、業界そして世間から置いてけぼりになるんですね。

 

もちろん、そういった事を何かしら自覚していて
毎日のようにリサーチをつづける方もいらっしゃいます。
そうした努力も見えないようですが、実は原稿に表われています。


     *

話をタイトルに戻しましょう。
私は7年あまりの間、業界紙記者として働きました。
業界は、産業廃棄物、包装資材、シール・ラベル、金属スクラップの
4業界です。
いずれも自分の努力だけでは最新の情報が得られないため、
私はライターになってから、よほどの依頼がない限り
これら業界の「原稿を書かない」と決めています。
なぜなら、その行為が自分の価値を下げるからです。

これはwebページの制作さんなら共感いただけるでしょうが、
原稿も何かのサイトも、読者は
「一番初めに見たタイミング」の内容で評価をします。
だからこそ、とくに情報の鮮度が問われる原稿は
出稿ギリギリまで書き直します。
サイトだって、ローンチの直前まで精一杯ページのボリュームを高めて
よく検証してから公開すると思うのです。

この感覚って、知っているかどうかで大きく変わりますから、
今回ブログで取り扱った訳ですが、
私がかつての業界について書くときは、
最低でも半年は改めて取材に回ると思います。

中途半端な原稿、あいまいな情報を世に出さない。
そして間違いがあったら、素直に認めて訂正する。
これはライターを含めた物書きさん全員の責任だと、私は考えています。

-残り7年と278日-